2012年1月1日日曜日

4. B. Anti Check Washing Test

以下の手順でテストを行いました(注1)

1. 筆記後約3週間乾燥
2. エタノールで10分間超音波洗浄
3. 除光液(主成分アセトン)で10分間超音波洗浄
4. 水で3分間超音波洗浄

(注1)
手順については、三菱鉛筆の英国サイト(改ざん防止における顔料インクの優位性を書いたページで、アセトンに10分間浸けることにより染料インクが除去されてしまう旨の記述あり)と、英語版WikipediaのCheck Washingの項(溶媒として、アセトン及びイソプロピルアルコールの記述あり)を、単純に組み合わせたものです。ただし、イソプロピルアルコールは手元になかったので、代わりにエタノールを使用しました。また、最後に水で洗浄したのは、除光液の香料がきつすぎたので、それを和らげるためです。
油性ボールペン
一見して、油性ボールペンは、Check Washing耐性の低いものが多いということが分かります。また、さらに細かく見ると、耐光性テストの結果と、ほぼ一致していることが分かります。

これは、耐光性に劣る油性染料ボールペンはCheck Washingに対しても弱く、逆に耐光性に優れる油性顔料又は油性染料顔料混合ボールペンはCheck Washing対しても強いということを意味します。ボールペンに使われる油性染料の多くは、低級アルコールやアセトンによく溶けるため、Check Washingで容易に洗い流されてしまうためと思われます。

以下、具体的製品について述べます。

耐光性と同じく、海外メーカーのボールペンは、昔ながらの油性染料ボールペンがほとんどで、Check Washingには弱いものとなっています。

ただし、古いParkerと古いMontblancは、Check Washingにもよく耐えています。特に古いMontblancは、ほぼ完全に文字が残っています。この原因も不明ですが、耐光性の場合と同じく、溶媒の揮発による濃縮か、そもそも成分が異なっていたかのいずれかだと思います。ただし、同様に古いCARAN d'ACHEや、実は10年ほど前の製品と思われるCrossも良く残っていることからして、前者の可能性が高いのではないかと思います。

日本メーカーのボールペンも、昔ながらの油性は、Check Washing耐性が低いのは耐光性の場合と同様です。

低粘度油性では、染料と、顔料又は染料顔料混合とで、耐光性以上にはっきり結果が分かれました。

easyFLOW  9000OLEENUUK-0.7といった油性染料の低粘度油性ボールペンは、軒並み綺麗に洗い流されています。耐光性テストでは、油性染料ボールペンとしてはかなりの健闘を見せたPilotA-ink やAcroballも、ここでは、ほぼ判読不能なまでに文字が消えています。

それに対して、JetstreamVICUNAといった油性染料顔料混合ボールペンは、いくらか文字が薄くはなるものの、十分判読可能な程度に文字は残っています。これだけ残っていれば、改ざんのおそれはないでしょう。

Surariは、文字は確実に残っているのですが、かなり薄くなっています。ただし、薄くはなっているとはいえ、文字が読める程度には残っているので、改ざんのおそれは低いと思います。

また、低粘度油性以外にも、PowerTankは、金属製リフィルもプラスチック製リフィルも文字が残っています。とりわけ金属製リフィルは、文字がほとんど薄くなることもなく、Check Washing耐性は非常に高いと言えます。

Pentel Rollyは、耐光性に引き続いて、ほぼ完璧なCheck Washing耐性を示しました。JetstreamVICUNAPowerTankでは、文字が残っているとはいえ、染料も混合されたインクであるため、アルコールやアセトンをかけられると文字がにじむことになりますが、Rollyではその心配もありません。Check Washing耐性の点では、油性の中では最も優れた製品ではないかと思います。

Fisher Space Penは、それなり薄くはなるものの、十分判読可能な程度に文字が残っています。現行の海外製「油性」ボールペンでは、おそらく唯一Check Washingに耐えられるボールペンなのではないでしょうか。

ゲルボールペン

これも一見して、ゲルインキボールペンは、Check Washing耐性が高いものが多いことが分かります。耐光性テストの結果とほぼ一致する点も共通です。

以下、具体的製品について述べます。

水性染料ゲルインキボールペンのうち、Pentel EnergelPentel SlicciPilot Dr.Grip Gelは、相当程度退色しました。今回のテストでは、主に有機溶媒による洗浄の影響を見ることに主眼があり、水での洗浄はわずかしか行っていないのですが、水性染料ということで、水には弱かったものと思われます。もっとも、油性染料ボールペンのように完全に消えてしまうことは、無いようです。

OHTO G-305Pilot Hi-Tec-C Cavalierは、水性染料ゲルインキボールペンにもかかわらず、ほとんど退色が見られません。水性染料ながら、ある程度の耐水性を持っているものと思われます。


一方、水性顔料ゲルは、いずれも、まったくと言っていいほど退色していません。顔料インクは、Check Washingに対しては、非常に耐性が高いと言えると思います。

水性ボールペン
水性ボールペンは、今回のCheck Washingテストで完全に文字が消えるものは殆どありませんでした。

以下、具体的製品について述べます。

まず、OHTO C-305Pentel Ball PentelPilot V CORNPilot V BALL RTuni(三菱鉛筆) UBR-300ZEBRA A-300Pilot Hi-tecpoint V5は、程度の差こそあれ、いずれも文字が薄くなっています。これらは、水性染料ボールペンであるため、水での洗浄部分で、インクが流されたものと思われます。

また、LamyFaber-CastellRotringは、文字が非常に滲んでいます。これらも水性染料ボールペンということで、同様にインクが流されたものと思われます。文字が薄くならずに、滲んだ理由は、インクの量が多かったことが理由ではないかと思います。

一方、水性顔料ボールペンの、Itoya PaperSkater SynergyOHTO NCB-300ATPilot MULTI BALLPilot PERMA BALLPilot V CORN Cuni(三菱鉛筆) Vision EliteTombow Zoom505は、全くと言っていいほど退色していません。やはり、顔料は、Check Washingに強いということが言えると思います。

マーカー
マーカーについても、傾向は変わりません。

水性染料インクのPentel Sign Penは、色がやや薄くなりました。水での洗浄部分で、インクが流されたものと思われます。

水性染料インクです。あまり退色していませんが、これは、水性ゲルインキボールペンの項でも述べたように、インクの量が多いからではないかと思います。

水性顔料インクのSakura Pigmaは、やはり退色がほとんどありません。

油性染料インクのZEBRA Mckeeは、ほぼ完全に消えてしまいました。耐光性テストでは、ほとんど退色が見られなかったのですが、油性染料というインクの性質上、Check Washingには非常に弱いようです。

万年筆

万年筆では、油性インクは(おそらく)存在しないため、水性染料か水性顔料かの違いになります。

以下、具体的製品について述べます。

PelikanPilotPlatinumSailor Jentle Ink Blackは、他の多くの水性染料インクと同様、消えはしないもののある程度退色するという結果となっています。もっとも、Sailor Jentle Ink Blackは、非常に濃く残っており、水には比較的流れにくいインクと言えるかも知れません。

これに対して、Montblancは、同じ水性染料インクでありながら、綺麗に消えています。水に非常に流れやすいインクと言えるのではないかと思います。

水性顔料のPlatinum Carbon BlackSailor 極黒Sailor 青墨は、いずれも、ほぼまったく退色していません。万年筆の場合も、顔料インクは、Check Washingに対して強いと言えるようです。

Platinum Blue Blackは、うっすらと文字が残る程度となりました。古典ブルーブラックインクの性質上、おそらくこれ以上は薄くなりにくいとは思いますが、水性染料インクと比べてもかなりの退色です。Check Washingに対して耐性があるとしていいかは、かなり微妙なところに思えます。

0 件のコメント:

コメントを投稿